中木健二さんチェロコンサート 2014.10.23(木)
先日、中木健二さんのチェロコンサートに行って来ました。
本当に素晴らしかったです。どの曲も世界観がしっかりと表現されており、引きこまれました。
バッハの無伴奏チェロ組曲第5番から始まり、中木さん委嘱作品の酒井健治作曲モノポリフォニー/デフィギュラシオン~独奏チェロのための~、リゲティの無伴奏チェロソナタ、ルトワフスキーのグラーヴェ チェロとピアノのためのメタモルフォシス、最後に、ブラームスのチェロソナタ第2番、という重みのあるプログラムでしたが、最後まで集中して聴ききりました。
酒井健治作曲のモノポリフォニーは、中木さん曰く「これまで演奏してきた中で一番難しい曲」とのことでしたが、確かに非常に難しそうな曲でした。プログラムノートには「冒頭にA音が聴こえるが、実は微分音程を伴っていてそれがだんだんと複数の音程に分離していくことが感じられ、複旋律へとひろがっていく」というようなことが書いてあり、始まりは正にそのとおりに、音が少しづつ歪んで(ひずんで)いくのです。曲中に何度もA音が出てくるのですが、聴けば聴くほどなんとも言えない不安な気持ちになります。技術的には他にも1小節だか短い時間にスルタスト(指板寄りの場所を弾く奏法)とスルポンティチェロ(駒寄りの場所を弾く奏法)を繰り返したり、つまり見た目にも弓は弦の上を上下に滑っている状態ですが、叩いたりはじいたり、全て説明できませんがいろいろすごいのです。ですが、表現というか世界観というか、空間全体で音楽されていて、“ただの難解な曲”という印象を与えないのです。リゲティも始めて聴きましたが、これも非常に難しそうな曲でしたが、やはりその世界に没頭できました。泣きそうでした。涙を誘うような曲調の曲ではないのに泣きそうだったのは、完全に引きこまれていたからでしょうか。
特に現代曲はともすると「難しそう」とか「よくわからなかった」という印象になってしまいますが、そうではなかったですね。もちろん難しそうでしたけど(笑)、いい演奏のときはそれ以上のものがちゃんとあって、奏者と共有できるということがわかりました。ピアノの島田彩乃さんも素晴らしかったです。
とても素晴らしい演奏会でした。